あなたのマンションは管理会社の「カモ」にされていないか
大規模修繕工事の 積立金が足りない!?
山田さんのマイホームは都心まで電車で40分の近郊にある小規模なマンション「エクセレントハイム」(仮名)。居住して7年目に持ち回りの管理組合理事の順番が回ってきて "ジャンケン" で理事長を拝命することとなった。「一年だけだし、実質的には管理会社がすべてやってくれるから簡単なものですよ」と前任者に言われ、たかをくくっていたのだが、実際には良くも悪くも想像を超えた濃密な一年を過ごすことになってしまう。エクセレントハイムに一体何が起こったのか?
理事長となった最初の理事会で、管理会社のフロントマンが「あと5年で大規模修繕工事が必要です。現在の積立金ではおそらく足りなくなるので、今から修繕積立金の増額をしなければなりません。手遅れにならないよう次の総会で、この件を成立させるのが今期の課題です!でもご心配なく、我々にはノウハウがあります!」と宣言したという。
都心の高級マンションではなく、普通のサラリーマンでも手が届く郊外のマンションで、現在の管理費・積立金でも家計には結構負担感があるのに、さらに値上げしなければ必要な修繕ができないとはどういうことだろうか。
管理会社を 変更するという選択肢
当惑した山田さんは、当期理事会メンバーだけでなく他の組合員にも声をかけて非公式な話し合いを持った。
値上げに納得はできないが、かといって修繕は避けられないというジレンマで話が進まなくなった時、ある人が「そういえば、知人のマンションでは管理会社を変えたら、支払う管理委託費が安くなり、それを積立金に回して値上げをせずに手持ちの資金で大規模修繕工事ができたらしい」と言い出した。
「え、管理会社を変えることなんてできるんですか?」と、半信半疑の山田さんだったが、ググってみれば同じような事例の紹介から管理会社の変更ノウハウまで多くの記事がある。管理会社を入札で選ぶためのコンサルタント会社まで存在することを発見した。
皆に話すと、大方の意見は負担額を変えずに大規模修繕工事を乗り切ることのできる可能性を探ろうというものだった。メンバーの中にそのようなコンサルタントを間接的に知っている人がいたので、有志による勉強会にコンサルタントを招くことから始めて、ついに1年かけて管理水準を落とさず管理委託費を減額し、その分を積立金に回せる新管理会社への移行をコンサルタント会社の助けを借りて実現したのだ。
管理費に シビアな目を向けよう
国交省の平成26年度の意識調査では、マンション黎明期の昭和50年代の居住者の多くが「一時的な住まい」とみなしていたのとは対照的に、居住者の50%以上が現在居住中のマンションを「終の住処」と考えていることがわかる。マンションは戸建に比べて高い防犯性、エネルギー効率、堅牢性などで気軽に住める印象があるが、戸建てにはない悩ましい問題も多い。
その一つの典型がエクセレントハイムで持ち上がったような管理費・修繕積立金の問題だ。これらは購入時には決まっており、生涯払い続けるとなると相当な額となる。
例えば、管理費+修繕積立金が月額3万円だと年間36万円、10年で360万円、30年間で1000万円を超える。しかも一回目の大規模修繕工事を前に値上げが必要になるケースも多い。
マンション購入時には 誰も気にしない長期修繕計画
管理費・修繕積立金の用途は、文字通りの二つの要素に分けられる。管理費は出納などの事務管理業務、管理員さんの人件費、消防点検、機械式駐車場、エレベーターなどの点検にかかる部分。もう一方の積立金は、主に多額の費用を要する大規模修繕工事に備えるお金。
マンションの販売カタログでは魅力的な最新設備に目が行きがちであり、管理費・修繕積立金に注目する人は多くはない。パンフレットに金額は表示されていても、どのような管理がなされ、どのような長期修繕計画があるのかは買い手には知る由もない。そもそも販売時には長期修繕計画自体ないことがほとんどだ。
だから、十数年後の最初の大規模修繕工事に際して値上げ、一時金負担、借入が必要ということにもなるのだ。普通、買い手はそこまで考えていないから、販売業者としては大きな買い物であるマンション購入に際して、管理費・修繕積立金という月々かかる支出を少なく設定する方が売りやすい。
数年後に値上げを切り出せば、素直に値上げに応じる組合がまだまだ多いのだ。山田さんのエクセレントハイムは素朴な疑問をそのままにしなかったので、最終的に負担増を避けて大規模修繕工事を乗り切ったラッキーな例といえよう。
管理会社は管理組合をランク付け カモにされない管理組合になろう
20年前までマンション管理は販売会社の関連企業か協力企業による無競争業界だった。しかし、元の管理会社との契約を打ち切り入札によって別の管理会社に変えるという手法の普及により、競争原理が働くようになって事態は一変した。全国で約9万3000(平成28年度、一般社団法人マンション管理業協会調べ。リゾート型を含む)ほどの管理組合に対し、約2000社(2013年国交省登録数2252社、以降減少傾向)の管理会社があるが、ようやく目覚めた管理組合からの管理会社変更も視野に入れた管理委託費の見直し圧力が強くなり、管理会社も激しい競争に勝ち残るためによりシビアな戦略を持ってマンション管理に当たっている。
その一つが管理会社による<管理組合"格付け"チェック>だ。管理組合は次のような三つのランクに格付けされる。
多くの場合、ここには有能なコンサルタントが存在する。中にマンション管理士、法律家、建築士といった組合員が相談役として存在するラッキーな組合もあるが、そうでなければコンサルタント料を払っても顧問を持つことが、結局はお得な選択だ。
ただし、最近ではコンサルタントも玉石混交だ。中には公正な入札に見せかけた談合の元締めのようなコンサルタントもおり、気がつけなければやはりカモられていたということにもなりかねない。
<Bランク>もはやフロントマンの言いなりにはならないクレバーなマンション
ただし、気を抜けば管理会社に手を抜かれCランク転落のおそれはある。管理会社も気を使い、比較的有能なフロントマンを起用している。
<Cランク>管理会社の言いなりになってくれるカモ的組合
これなら当然A・Bランクには起用できないレベルのフロントマンで十分。実はいまだに7~8割のマンションはこのレベルにある。
あなたがお住まいのマンションはどれに格付けされているだろうか?絶対にCレベルでいてはいけない理由がある。管理会社はもはやシビアなAランク、Bランクのマンションから大きな利益は期待できないので、カモるとしたらCランクマンションという現実があるからだ。
管理会社を油断させないためにも ワンランクアップを目指そう
さて、山田さんのエクセレントマンションだが、管理会社を変えて今年で10年。築14年目に、積み立てられた金額の範囲内で、十分な大規模修繕工事を実施することができた。管理費・積立金の金額も変えることなく、しばらく先になる次期大規模修繕工事への備えも怠りない。
今も理事会のメンバーは毎年変わるが、管理会社変更の経験をした山田さんと2人の当時の理事が議決権のない相談役として理事会に出席し、最近ちょっとたるんできたように思える管理会社の手綱を引いて、Bランクを維持している。
今年、山田さん自身はあの一年の経験を生かし独学を続けた結果、国家試験を突破して管理組合出身のマンション管理士となった。これで山田相談役は実質、無給の顧問となりエクセレントマンションはその名の通り、管理会社を油断させないAランクのマンション管理組合へのランクアップを果たすことになるだろう。
山田さんのような管理組合出身のマンション管理士の中には、そう多くはないもののマンション管理士事務所を開いて多くの管理組合の顧問として活躍している人もいる。
さあ、あなたのマンションでもまずはワンランクアップを目指そう。
ダイアモンドオンラインより抜粋
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